トピックス ニジマスの卵を温泉に漬ける・三倍体魚の作出
塩焼きサイズで馴染みのあるニジマスを
大きく育てて出荷する取組を以前紹介しました(トピックス平成29年8月25日)。
富士養鱒場では3年でおおよそ3kgに成長しますが、
同時に、ニジマスは2~3歳で成熟するため
普通のニジマスを大きく育てようとしても、いい頃合には成熟してしまいます。
魚は成熟して卵を持つと、ほとんどのエネルギーを卵に与えてしまうため、
親の魚は痩せてしまい、味も劣ってしまいます。
そこで、成熟しないニジマスの生産の研究が過去に行われてきました。
その方法は、とても簡単。卵を受精直後に30℃程度の温水に漬けてあげるだけ。
少しぬるめの温泉に入った卵から産まれたニジマスは、
成熟することなく大きくて美味しいニジマス育ちます。
温水につかる卵 三倍体の原理
生き物は通常2組の染色体を持っていて、
染色体を1組ずつ持つ卵と精子が作られて、
これらが受精することで、染色体2組を持った子が産まれます。
ですが魚の場合、受精前の卵は2組の染色体を持っていて、
受精後に、そのうちの1組(極体)が卵外に放出されて、
卵からの1組と精子からの1組とが組み合わさった2組で発生が始まります。
受精後に卵を温水に漬けると、
その刺激により、本来放出されるべき極体がそのまま卵内に留まり、
卵からの2組と精子からの1組とが組み合わさった3組の染色体を持つことになります。
これを三倍体(さんばいたい)と言います。
なお、通常の2組の染色体を持つ魚を二倍体(にばいたい)と言います。
三倍体の魚は、通常の二倍体と何ら変わり無く正常に成長しますが、唯一異なるのは「成熟しない」ことです。
これは、卵を上手く作ることができないためです。
ちなみに、こうした染色体の組数を操作する方法は植物の分野でも数多く用いられていて、
”種無しスイカ”などが代表的な例です。