静岡県水産・海洋技術研究所 浜名湖分場


魚病情報

 魚病情報 パンくずリスト矢印 ウナギの疾病 パンくずリスト矢印 点状出血症・板状出血症

点状出血症・板状出血症

<原因>

ウイルス性の疾病。両疾病とも病変部に同じ大きさと形態のウイルスが認めら れ、同じウイルスが原因ではないかとされている。また、病理学的にも基本的に同じ疾病と考えられており、症状の出方に違いがあるだけではないかとされてい る。しかし完全に同じ疾病であるか否かはさらに検討をする必要がある。

<症状>

点状出血症は鰓に比較的大きな点状の出血が認められることを特徴とする。一 方、板状出血症は点状出血症と鰓の症状が類似しているが、点状出血症と比べると出血点が小さく、肉眼的には鰓全体が暗赤色に見える。しかし実際には両者は 混在していたり、点状から板状へ移行する例もしばしば認められており、必ずしも明確には区別されていない。これら点状出血と板状出血の病変は鰓に限られ、 外観を含めて特徴的な症状に乏しい。鰓における症状は、鰓の上皮の顕著な肥厚と脱落、鰓薄板内の毛細血管のうっ血あるいは出血が共通する特徴である。
点 状出血症の発生は相当以前から認められていたが、当時の被害は軽微で、今日のハウス加温養鰻が普及するとともに被害が増大してきた。また、一見異常が認め られない池のウナギでも調べてみるとかなりの頻度で点状出血症の症状のあるウナギが認められることがある。これらのことから、本疾病の発生が即座に死亡に つながるわけではなく、鰓の異常によって生理機能が低下しているときに、種々の環境の変化などによって死亡に結びつくのではないかとされている。すなわ ち、本疾病の原因ウイルスの病原性はさほど強いものではなく、かなり条件に左右されるものと思われる。
本疾病は新仔およびヒネ仔のいずれにも発生し周年見られるが、6〜9月の夏季に多い傾向がある。

<治療>

一般的に、もっぱら昇温処理が行われている。死亡がまだ見られないかあるいはまだ極めて少ない時点で、飼育水温を33〜35℃まで上げ、2〜3日 間維持した後、徐々に常温に戻す。このような昇温処理の持つ意味としては、ウイルスの増殖源となる衰弱魚を高水温により殺し、感染源を除去するという意味 があると考えられている。しかし、根本的な対策とは考えにくく、すでに重篤に本症が蔓延している場合には際限なく死亡が続くことがあり、昇温処理はできる だけ早期の段階で実施することが肝要である。また、本処理の実施に際しては、処理前に十分な餌止めを行い、換水を十分に実施した後に行うべきである。さら に、他の疾病が合併していないこと、自分の池のボイラー設定誤差などを考慮し35℃以上にならないように確認してから実施するなど、不用意な死亡をひき起こさないよう厳重な注意が必要である。

 

参考文献

反町稔:重要疾病の予防と治療 ウナギ.養殖1994年1月臨時増刊号
和田和彦:鹿児島県における淡水養殖魚の疾病発生状況.養殖1992年10月号

 

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