ビブリオ病
<原因>
細菌性の疾病で、病原細菌はVibrio anguillarumである。本菌の発育温度域は10〜35℃(最適温度25〜28℃)、発育可能塩分濃度は0.5〜6%(最適塩分1%前後)である。
養魚場で発生するビブリオ病の病魚からはA、BおよびCの3種類の血清型の菌が分離される。血清型別の出現率ではA型がほぼ9割を占める。
自然界における本菌の分布や生態については明らかでない点が多いが、海産稚アユでは沿岸水域に常在する菌が、琵琶湖産稚アユでは保菌しているアユ、稚魚ある いはプランクトンなどが感染源になっていると考えられている。したがって、養魚場でビブリオ病が発生、蔓延するのは、海産および琵琶湖産ともに、採捕稚アユの一部がビブリオ菌を保菌していて、採捕、輸送、環境の急変、過密飼育などのストレスを受けて発病するものと思われる。
<症状>
1g以下の小型のアユでは、体色が灰白色を帯び、わずかにスレ症状を示す程度で、顕著な病変は認められないことが多い。しかし、5g以 上のアユでは、初期には体側などに斑紋状ないし帯状の退色部が認められ、さらに病状が進行すると出血や潰瘍など、顕著な症状が見られるようになる。そのほか、眼球の出血、胸鰭基部の充血などが認められる。解剖すると肝臓にうっ血が見られ、とくに脾臓が肥大してもろいのが特徴である。また、腸管に強い炎症が 起きている場合も多い。
本疾病の発生は周年にわたるが、流行期は5〜9月である。
<治療>
本疾病は非常に多くの死亡魚の発生を伴うため、早期発見と的確な処置が肝要である。
治療には抗生物質や合成抗菌剤の経口投与が有効である。用いる薬剤の選択に際しては、アユのビブリオ病に対して使用が認められている水産用医薬品の中から、薬剤感受性検査を行って最も効果的なものを選択する必要がある。
薬剤の効果は普通、投薬3日目には遅くても認められるので、日間死亡数の減少によって判断するのが良い。所定の処置を行っても死亡が減少しないときには、薬剤の種類を再検討するとともに、他の疾病の疑いを持って検査しなおす必要がある。
<予防>
種苗の導入に際しては、外観に異常が認められない場合でも、一部の種苗がビブリオ菌を保菌していることがあるので、保菌魚が発病しないような魚の取扱や、飼育管理、飼育環境を保つことが必要である。一例をあげれば、種苗の輸送にあたっては、水温を13℃前後に保ち、食塩を0.5〜0.6%程度になるように添加して生理的負荷の軽減を図ったり、到着後、活魚槽に養魚池の飼育水を1〜2時 間注水し、新しい環境に順応させた後に放養したり、放養後もアユの活力が回復するまで流速を抑えるなど、ビブリオ病発生の誘因になるようなストレスを与え ない配慮が必要である。すでに飼育しているアユがいる場合には、新たに種苗を搬入する際には、半月以上疾病が発生しないことを確認するまでは別に隔離して 飼育するべきである。
<参考資料>
(魚類防疫技術書シリーズUアユの魚病((社)日本水産資源保護協会)より
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