漁期当初のマサバ産卵親魚量・漁獲量

本漁期は、2004年級群に次ぐ加入水準の高い2009年級群が3歳魚となり、たもすくいの漁獲主体となる。昨年6月末時点の資源量から12月末までのマサバの漁獲を差し引いて求めたマサバ推定来遊資源量（3歳魚以上と2歳魚の一部）は、昨年を上回ると推定された。したがって、漁獲量も昨年を上回ると考えられる。

初漁日，漁場

犬吠以北のまき網漁場は、昨年12月末現在、鹿島沿岸〜犬吠埼沖〜九十九里沖に見られている。昨年10月に見られていた35cm（3歳魚（2009年級群））以上のまとまった漁獲が11月に見られなくなっていることおよび12月の千葉丸のミゾ場での調査で35cmモードの魚体が見られていることから、早く成熟する大型の来遊群は犬吠埼以南まで南下していると考えられる。しかし、黒潮流路は1〜4月前半はN型基調、4月後半以降B、C型と変動し、野島埼では、接岸傾向で推移し、離接岸変動は小さいと予測されていることから伊豆諸島海域への南下は遅れ、漁場形成は遅れる可能性が高い。ただし、南下群の情報が少なく不確定なため今後の漁海況の推移を注視する必要がある。

1〜4月前半は黒潮流路の変動に伴い、北部海域への暖水波及が考えられることから北部海域を中心に漁場が形成されると考えられる。4月後半以降は北部海域から三宅島周辺に広く暖水波及が見込まれることから，大室出し・ひょうたん瀬の他に三宅や銭洲の漁場形成も考えられる。

漁況

本漁期中の黒潮は、概ねN型基調になると予測されるが、小規模な黒潮流路変動の影響による漁場の移動が予想される。盛漁期の漁況は1夜1隻平均15トン程度（大型船）まで上向くこともある。

魚体

昨年12月末時点のマサバ推定来遊資源量では、2、3歳魚の資源量水準が高く、今漁期の漁獲の主体となると考えられる。現在まき網の漁獲の主体となっているのは、2、3歳魚である。

漁期初めは大型魚主体で、以降小・中型魚主体となる。漁期終盤には、例年のとおり再び大型魚の割合が増える可能性もある。

北上期

漁期終盤に大室出しへの暖水波及があるときは、北上が開始される。

（ア）来遊量

ゴマサバ太平洋系群の資源量は1990年代後半以降高い水準にある。1歳魚（2011年級群）の加入水準は中位（8億尾）と推定されているが、2011年7〜11月の伊豆諸島海域における静岡県棒受網漁獲尾数（以下　漁獲尾数）は2009年同期における2009年級群の23％に止まっている。予測期間における1歳魚（2011年級群）の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数割合＊16％から予測すると5,280千尾（前年1歳魚の138%）となり（図1左）前年を上回ると予測された。2歳魚（2010年級群）の加入水準は比較的高い（10億尾）と推定されているが、2011年7〜11月の漁獲尾数は2010年同期における2009年級群の25％に止まっている。2歳魚（2010年級群）の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数割合10％から予測すると7,685千尾（前年2歳魚の64%）となり（図1中）前年を下回ると予測された。3歳魚（2009年級群）の加入水準は、卓越年級群であった2004年級群に次いで高い（18億尾）と推定されており、現在まで伊豆諸島海域の漁獲の主体となっており、予測期間中の漁獲を支えると考えられる。3歳魚（2009年級群）の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数割合56％から予測すると7,525千尾（前年3歳魚の1,653%）となり（図1右）前年を上回ると予測された。4歳魚以上（2008年級群以上）の残存資源量は少ないと推定されているが、10〜11月の常磐海域のまき網では34cm以上の群もみられ、予測期間に向け伊豆諸島海域に南下することも期待されるため、大型魚を狙うたもすくいの漁獲対象になる可能性がある。

予測期間における静岡県棒受網CPUE(1日１隻あたり水揚量。以下同じ)を、前年7〜11月のCPUE23.3トンから推定すると16.6トン（前年同期の95%）となった（図2）。また、予測期間2012年1〜6月は、前年7〜11月に2歳魚（2009年級群）が卓越した点で、2007年1〜6月（2006年7〜11月の2歳魚・2004年級群の漁獲尾数割合は73％）に類似する。2007年1〜6月のCPUEは、11.5トン（前年比49％）と前年を下回ったが、理由としてマサバへの漁獲努力の傾注のほか、3歳魚（2004年級群）主体であったことが考えられる。以上のことから、棒受網CPUEは前年を下回ると予測された。たもすくいCPUEは、マサバ漁況の影響を受けるものの、棒受網CPUEと概ね同調する（n=21 r=0.55 p＜0.01）ことから下回ると予測された。総合すると、ゴマサバ全体の来遊量は3歳魚主体のため、高水準の中で前年を下回るが、鮮魚用となる大型魚の割合が例年に比べ高いと期待される。
 
＊漁獲尾数割合：全漁獲物中に占めるその年級群の割合。

（イ）漁期・漁場

近年の棒受網・たもすくいの漁場形成状況から予測した。

（ウ）魚体

年齢については、上記（ア）来遊量の年級群ごとの加入水準、漁獲状況から予測した。魚体については、近年における棒受網の年齢別尾叉長モードから予測した。