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静岡県水産・海洋技術研究所


海況、資源動向の情報:一都三県サバ漁海況検討会

 待合室「ふきゅう」 パンくずリスト矢印 海況、資源動向の情報:一都三県サバ漁海況検討会 パンくずリスト矢印 平成23年1月〜6月の県内漁海況予測

一都三県サバ漁海況検討会(平成23年1〜6月)

平成23年01月11、12日:一都三県水産研究機関(東京都島しょ農林水産総合センター、神奈川県水産技術センター、静岡県水産・海洋技術研究所、千葉県水産総合研究センター)

1.海況

(1)黒潮(2011年1〜6月)

黒潮は、1〜3月はN型基調で推移する。4月以降にB・C型となり、伊豆諸島北部海域は、概ね冷水域に入る。黒潮流路の変動に伴い、内側域への一時的な暖水波及がある。
野島埼沖では、流路変動に伴い離接岸がみられる。
伊豆諸島北部海域の水温は、「平年並」〜「低め」で推移する。暖水波及時には「高め」となる。

(2)説明

1月5日現在、黒潮は新島から御蔵島付近を通るN型流路で推移している。今後は3月まではN型で推移し、現在、都井岬沖に黒潮の小蛇行があり、3〜4月に四国沖を東進することから4月以降は小蛇行の東進によって、B・C型で推移する見込みである。 黒潮流型図

※平年並み=平年値±0.5℃程度、やや高め・やや低め=平年値±1.0℃程度、高め・低め=平年値±1.5℃程度、かなり高め・かなり低め=平年値±2.5℃程度。

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2.マサバの漁況

(1)予測(2011年1〜6月)

 (ア)来遊量と漁獲量

伊豆諸島海域に来遊すると推定される資源は、比較的加入量水準の高い2歳魚(2009年級群)が主体となり、3歳魚(2008年級群)と4歳魚(2007年級群)がこれに混じる。マサバ全体としては昨年(891トン)をやや上回る。

 (イ)漁期・漁場

伊豆諸島周辺海域では、大室出し〜ひょうたん瀬といった北部海域が主漁場になるが、黒潮流路は1月以降N型、4月以降B、C型と変動すると予測されており、三宅島周辺海域や銭洲海域でも漁場が形成される可能性がある。また、2歳魚が漁獲の主体となる場合、本格的な集群と漁場形成は、3月以降となると考えられる。

 (ウ)魚体

マサバは28〜33p(2歳魚)が主体で、33〜38p(3、4歳魚)も混じる。

※年齢は年初に加齢し2011年時で表す。魚体は尾叉長で表す。

 

(2)説明

漁期当初のマサバ産卵親魚量・漁獲量

本漁期は、2007年級群に次ぐ加入水準の高い2009年級群が2歳魚となり、たもすくいの漁獲主体となる。昨年6月末時点の資源量から11月末までのマサバの漁獲を差し引いて求めたマサバ産卵資源水準(3歳魚以上と2歳魚の一部)は、昨年をやや上回ると推定された。したがって、漁獲量も昨年をやや上回ると考えられる。

初漁日,漁場

犬吠以北のまき網漁場は、昨年12月末現在、常磐南部〜鹿島沿岸〜犬吠埼沖に見られ、前年に比べ南下は遅れている。昨年11月上旬まで見られていた35、36cmモードの4歳魚(2007年級群)以上のまとまった漁獲が中旬以降見られなくなっていることから、早く成熟する大型の来遊群は犬吠埼以南まで南下していると考えられ、伊豆諸島海域の環境条件が良好になればマサバの漁場が1月中に形成される可能性がある。
今漁期の漁獲の主体となる2歳魚は現在まき網の漁獲の主体となっており、1月上旬現在、外房の定置網で本格的なマサバの入網は見られていない。また、2歳魚が漁獲の主体となる場合、集合時期は漁期の半ば以降となることが多いことから、来遊群の本格的な伊豆諸島海域への集群は3月以降になると考えられる。

漁況

本漁期中の黒潮は、漁期前半はN型基調であり、伊豆諸島海域に極端な冷水に覆われる可能性が少ないことから、漁況は生物依存(成熟度合、来遊量)となる。したがって、中熟期と産卵盛期に漁況は1夜1隻平均15トン程度(大型船)まで上向くこともある。

魚体

漁期初めは大型魚主体で、以降小・中型魚(2、3歳魚)主体となる。漁期終盤に再び大型魚の割合が増える可能性もある。

北上期

漁期後半の黒潮はB、C型と変動すると予測されていることから、伊豆諸島海域が冷水に覆われた場合、マサバの北上が遅れ漁場が継続する可能性がある。

マサバ写真

(3)マサバ資源管理

高い加入により近年の親魚量を支えた2004年級群の残存資源尾数は少ない。2004年級群に準ずる高い加入水準であると考えられる2007年級群は、今期は4歳魚となり、残存資源尾数は減少している。これに続く2008年級群の加入量水準は低いものの、2009年級群の加入水準は比較的高いと考えられ、今期は2歳魚であり、産卵への寄与はまだ低いが、今後のマサバ親魚資源の主体となる重要な年級群である。2010年級群は2007、2009年級群には及ばないものの比較的高い水準と考えられている。近年のマサバ若齢魚に対する漁獲割合は低下しているが、マサバ資源の本格的な回復を図るためには、油断することなく2009、2010年級群を保護することが必要である。

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3.ゴマサバの漁況

(1)予測(2011年1〜6月)

 (ア)来遊量

ゴマサバ1歳魚(2010年級群)は前年を下回る。2歳魚(2009年級群)は前年を上回る。3歳魚(2008年級群)は前年を下回る。ゴマサバ全体では前年並〜下回る。

 (イ)漁期・漁場

期を通じて三宅島周辺海域が主漁場となるが、マサバに混獲される場合は伊豆諸島北部海域でも漁場が形成される。

 (ウ)魚体

2歳魚(2009年級群・27〜31cm)主体に1歳魚(2010年級群・24〜28cm)も漁獲される。また、3歳魚(2008年級群・32〜34cm)以上も混じる可能性がある。

※年齢は年初に加齢し2011年時で表す。魚体は尾叉長で表す。

 

(2)説明

(ア)来遊量

ゴマサバ太平洋系群の資源量は1990年代後半以降高い水準にある。1歳魚(2010年級群)は近年の平均(以下 平年)を上回る加入水準(12億尾)と推定されているが、2010年7〜11月の伊豆諸島海域での棒受網漁獲尾数(以下 漁獲尾数)は前年同期における2009年級群の25%に止まっている。予測期間における1歳魚(2010年級群)の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数3,824千尾から予測すると6,342千尾(前年1歳魚の95%)となり前年を下回ると予測された。2歳魚(2009年級群)は平年を上回る加入水準(16億尾)と推定され、伊豆諸島海域でも2009年9〜12月、2010年5〜12月に漁獲の主体となっており、予測期間中の漁獲を支えると考えられる。予測期間における2歳魚(2009年級群)の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数10,531千尾から予測すると9,573千尾(前年2歳魚の252%)となり前年を上回ると予測された。3歳魚(2008年級群)の加入水準は低い(4億尾)と推定されており、現在まで伊豆諸島海域での漁獲の主体となっておらず多くは期待できない。予測期間における3歳魚(2008年級群)の漁獲尾数を0歳7〜11月時の漁獲尾数494千尾から予測すると2,496千尾(前年3歳魚の60%)となり前年を下回ると予測された。4歳魚(2007年級群)は平年を上回る加入水準(11億尾)と推定されているが、残存資源量は少ない。しかし、2010年10〜11月の三陸〜常磐海域のまき網では30〜34cmにモードを持つ群も散見されたほか、12月の伊豆諸島海域での体長測定結果では30cm超の群の割合が11月に比べ増加した。このことから、大型魚を狙うたもすくいにあっては、3歳魚(2008年級群)、4歳魚(2007年級群)も混じる可能性がある。
予測期間における静岡県棒受網CPUE(1日1隻あたり水揚量。以下同じ)を、前年8〜11月のCPUE29.8トンから推定すると20.0トン(前年予測値の85%)となった。また、1998年、2006年、2009年は、前々年に加入水準の高い年級群が発生した(2歳魚の加入水準が高かった)点で2011年に類似する。3か年の1〜6月の静岡県棒受網CPUEは、1998年で13.9トン(前年比79%)、2006年で23.5トン(前年比143%)、2009年で14.5トン(前年比63%)であり、比較的高水準ながら前年を下回ることが多かった。以上のことから、棒受網のゴマサバ全体について前年並〜下回ると予測した。
たもすくいCPUEを、前年8〜11月の棒受網CPUE29.8トン、予測期間におけるたもすくいマサバCPUE3.0トン(前年並を仮定)から、下記の式で予測すると5.1トン(前年比85%)となった。このことから、たもすくいのゴマサバ全体についても前年並〜下回ると予測した。
 
予測式:1〜6月たもすくいゴマサバCPUE=0.1553(前年8〜11月棒受網ゴマサバCPUE)−1.574(1〜6月たもすくいゴマサバCPUE)+5.135
R2=0.42 n=20

(イ)漁期・漁場

近年の棒受網・たもすくいの漁場形成状況から予測した。

(ウ)魚体

年齢については、上記(ア)来遊量の年級群ごとの加入水準、漁獲状況から予測した。魚体については、近年における棒受網の年齢別尾叉長モードから予測した。

ゴマサバ写真

注:本文中の年齢は全て2011年(平成22年)1月1日を基準とする。
注:1歳魚(2010年級群)、2歳魚(2009年級群)、3歳魚(2008年級群)、4歳魚(2007年級群)、5歳魚(2006年級群)

 

なお、詳細とこれまでの経過と現況(海況、漁況)、漁期前調査結果については、「こちら」をご覧ください(PDFファイル)。

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