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静岡県水産・海洋技術研究所


海況、資源動向の情報:一都三県サバ漁海況検討会

 待合室「ふきゅう」 パンくずリスト矢印 海況、資源動向の情報:一都三県サバ漁海況検討会 パンくずリスト矢印 平成22年1月〜6月の県内漁海況予測

一都三県サバ漁海況検討会(平成22年1〜6月)

平成22年01月07、08日:一都三県水産研究機関(東京都島しょ農林水産総合センター、神奈川県水産技術センター、静岡県水産・海洋技術研究所、千葉県水産総合研究センター)

1.海況

(1)黒潮(2010年1〜6月)

黒潮は,1月中にD型からN型となる。伊豆諸島北部海域は,流路の移行期は暖水波及が継続するが,その後は冷水に覆われる。以降,N型基調で推移するが2月と4〜5月には蛇行部の通過によって一時的にB・C型流路となる。
野島沖では,離岸傾向となるが,流路の変化にともない離接岸を繰り返す。
伊豆諸島北部海域の水温は概ね冷水域に入るため,平年並み〜低めで推移するが,暖水波及時には高めとなる。

(2)説明

1月6日現在,黒潮は八丈島付近を通るD型流路で,駿河湾沖と房総半島沖から伊豆諸島北部に向けて暖水波及がみられる。今後は,三宅島東の冷水塊の移動に伴いN型流路となり,伊豆諸島北部はおおむね冷水に覆われる。また,現在,四国沖と屋久島の南に黒潮の蛇行部があり, 2月以降はこれらの東進によって,一時的なB・C型を含む離岸傾向のN型で推移する見込みである。 黒潮流型図

※平年並み=平年値±0.5℃程度、やや高め・やや低め=平年値±1.0℃程度、高め・低め=平年値±1.5℃程度、かなり高め・かなり低め=平年値±2.5℃程度。

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2.マサバの漁況

(1)予測(2010年1〜6月)

 (ア)来遊量と漁獲量

伊豆諸島海域に来遊すると推定される資源は,比較的発生量の多い3歳魚(2007年級群)が主体となり(前年の5.5倍),2歳魚(2008年級群)と4〜6歳魚(2006〜2004年級群)がそれに続くことから,全体としては昨年をやや上回る。
漁獲量は,昨年を上回る。

 (イ)漁期・漁場

漁期当初は,伊豆諸島北部海域の大室出しもしくはヒョウタン瀬が漁場となり,3,4月は三宅島周辺海域で漁場が形成される可能性もある。伊豆諸島海域への暖水波及は断続的だと推定されることから,漁場・漁況とも断続的になる。漁期後半は伊豆諸島北部海域の大室出しが中心となる。漁期後半は伊豆諸島北部海域に暖水が波及した場合(水温が20℃以上になると),漁期は短くなる。

 (ウ)魚体

マサバは尾叉長33〜35cm(3歳魚)が主体で,37cm以上の大型魚(4〜6歳魚)も混じる。

※年齢は年初に加齢し2010年時で表す。魚体は尾叉長で表す。

 

(2)説明

漁期当初のマサバ産卵親魚量・漁獲量

本漁期は,2004年級群に次ぐ加入水準の2007年級群が3歳魚となり,たもすくいの漁獲主体となる。昨年6月末時点の資源量から11月末までのマサバの漁獲を差し引いて求めたマサバ産卵資源水準(3歳魚以上と2歳魚の一部)は,昨年の1.3倍程度と推定された。したがって,漁獲量も昨年を上回ると考えられた。

初漁日,漁場

東北海区は,マサバの南下を遮るような海洋条件ではない。犬吠以北のまき網漁場では,昨年12月上旬以降,2歳魚以上のまとまった漁獲がないこと,12月中旬以降,外房の定置網でマサバの入網がみられることからは,来遊群は犬吠以南まで南下したと考えられる。
まき網や定置網では,量的には少ないものの,早く成熟する4歳魚以上の大型魚の漁獲も目立つことから,伊豆諸島海域の環境条件が良好になれば,1月中にマサバの漁場が形成される可能性が高い。
1月中は北部海域から三宅島周辺に暖水波及が見込まれることから,大室出し・ヒョウタン瀬の他に三宅や銭洲の漁場形成も考えられる。

漁況

本漁期中の黒潮は,N型基調であり,伊豆諸島海域に極端な冷水塊に覆われる可能性が少ないことから,漁況は生物依存(成熟度合,来遊量)となる。したがって,中熟期と産卵盛期に漁況は1夜1隻平均15トン程度(大型船)まで上向くこともある。

魚体

漁期初めは大型魚主体で,以降中型魚(3歳魚)主体となる。漁期終盤に再び大型魚の割合が増える可能性もある。

北上期

漁期後半も黒潮はN型基調で,伊豆諸島海域がマサバの北上を留めるほどの冷水に覆われる可能性が少ないことから,5月頃からマサバの北上がはじまり,漁場は長続きしない。

マサバ写真

(3)マサバ資源管理

高い加入により近年の親魚量を支えた2004年級群の残存資源尾数は少ない。2004年級群に準ずる高い加入水準であると考えられる2007年級群は,今期は3歳魚となり,マサバ親魚資源の主体となる重要な年級群である。これに続く2008年級群の加入量水準は低いものの,2009年級群の加入水準は高いと考えられている。近年のマサバ若齢魚に対する漁獲率は低下しているが,マサバ資源の本格的な回復を図るためには,油断することなく2009年級群を保護することが必要である。

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3.ゴマサバの漁況

(1)予測(2010年1〜6月)

 (ア)来遊量

ゴマサバ1歳魚(2009年級群)は前年を上回る。2歳魚(2008年級群)は前年を下回る。3歳魚(2007年級群)は前年を上回る。4歳魚(2006年級群)以上は少ない。ゴマサバ全体では,前年を上回る。

 (イ)漁期・漁場

期を通じて三宅島周辺海域が主漁場となるが,マサバに混獲される場合は伊豆諸島北部海域でも漁場形成がある。

 (ウ)魚体

1歳魚(2009年級群・23〜28p)主体に漁獲され,3歳魚(2007年級群・32〜35p)も混じる可能性がある。

※年齢は年初に加齢し2010年時で表す。魚体は尾叉長で表す。

 

(2)説明

(ア)来遊量

ゴマサバ太平洋系群の資源量は1990年代後半以降高い水準にある。1歳魚(2009年級群)は平均を上回る加入水準(16億尾)と推定されており,2009年9月以降の伊豆諸島海域においても漁獲の主体となっていることから,予測期間中の漁獲を支えると考えられる。2歳魚(2008年級群)の加入水準は低い(4億尾)と推定されており,2009年10月以降の伊豆諸島海域でも漁獲の主体となっておらず多くは期待できない。3歳魚(2007年級群)は平均を上回る加入水準(11億尾)と推定されており,2007年10月から2009年6月まで伊豆諸島海域でも漁獲の主体となった。2009年末現在,東北海域,駿河湾のまき網でまとまった漁獲がみられるほか,伊豆諸島海域でも調査船調査の立縄で釣獲される。伊豆諸島海域は若齢魚主体の漁場とされるが,大型魚を狙うたもすくいにあっては,3歳魚(2007年級群)も混じる可能性がある。
2010年1〜6月の静岡県棒受網CPUE(1日1隻あたり水揚量。以下同じ)を,前年8〜11月のCPUE33.0トンから推定すると23.6トンとなり前年(14.5トン)を上回ると考えられる。たもすくいCPUEについては,マサバ漁況の影響を受けるものの,棒受網CPUEと概ね同調(r=0.605 p<0.01)することから前年を上回ると考えられる。また,1997年,2005年,2008年は,前年に豊度の高い年級群が加入した点で2010年に類似する。各年の1〜6月の静岡県棒受網CPUEは,1997年で17.7トン(前年比174%),2005年で17.2トン(前年比95%),2008年で23.0トン(前年比200%)であり,比較的高水準で前年を上回ることが多く,2010年1〜6月のCPUEも前年を上回る可能性が高いと考えられる。以上のことから,ゴマサバ全体では前年を上回ると予測した。

(イ)漁期・漁場

近年の棒受網・たもすくいの漁場形成状況から予測した。

(ウ)魚体

年齢については,上記(ア)来遊量の年級群ごとの加入水準,漁獲状況から予測した。魚体については,(2009年末の伊豆諸島海域のモード〜該当年齢夏季の平均尾叉長)で予測した。

ゴマサバ写真

注:本文中の年齢は全て2010年(平成22年)1月1日を基準とする。
注:1歳魚(2009年級群)、2歳魚(2008年級群)、3歳魚(2007年級群)、4歳魚(2006年級群)、5歳魚(2005年級群)

 

なお、詳細とこれまでの経過と現況(海況、漁況)、漁期前調査結果については、「こちら」をご覧ください(PDFファイル)。

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