水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ 駿河湾海洋深層水はどこから?
駿河湾海洋深層水はどこから? (平成20年11月11日 掲載) 深海生物が教えてくれる
静岡県では、駿河湾の水深397メートルと687メートルから2層の海洋深層水をおのおの内径約23cmの取水管を通して取水している。取水口には深海からの来訪者を防ぐ装置がないことから、普通お目にかからない深海生物が陸上の取水装置に上がってくることがある。 採取された魚類を調査した結果、16種類が確認された。採取水深別にみると、397メートルで採取された魚類は6種類、687メートルでは16種類すべて。深海釣りの魚として有名で味がいい赤魚のアコウダイ、ホオズキ、体が細長いコンゴウアナゴ、イラコアナゴ、キツネソコギス、大型のチゴダラ、トミヤマヒゲ、テナガダラなども見られた。中には1000メートル以深が生息域のナメライワシも採取された。 いずれも従来から駿河湾に生息しているとされるものがほとんどだが、生息分布域に駿河湾が含まれていない魚類も3種類認められた。ニュウドウカジカ(写真上)は、北日本の太平洋・オホーツク海〜東部ベーリング海に、ザラビクニン(写真中)は、日本海、オホーツク海、タタール海峡に、アラスカビクニン (写真下)は、日本海、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾に、それぞれ生息するとされ、いずれも亜寒帯系の魚種だ。駿河湾は水深2,500メートルの日本最深の湾で、起源や水質の異なる4タイプ5層の、多層の水塊からなる海洋構造とされる。今回、水深687メートルで3種類の亜寒帯系の魚種が採取されたことより、その水深帯は亜寒帯系由来の深層水であることを裏付けるものと思われる。「深海からの来訪者」は海の謎を教えてくれる。 (岡本一利・県水産技術研究所利用普及部)
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