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トビエイ (平成19年10月2日 掲載)

―初夏、群れをなして遊泳―

トビエイ

写真説明:泳ぐのが特徴のトビエイ(カラー)

トビエイという名前の魚を知っていますか。この魚、海中を泳ぐ姿がまるで空を飛ぶ鳶(トビ)のように見えることから、この名がつけられたと言われています。一方で、優雅な名前とは裏腹に、豚に似るひょうきんな顔立ちから、「エイブタ」や「クロブタ」と呼ばれることもあるそうです。今回は、そんなトビエイについて紹介します。

トビエイ、あるいは同じトビエイ科の仲間は、鮮魚店よりもむしろ水族館で見ることができます。ひし形をした大きなエイが、巨大な水槽で悠然と泳いでいるのを見たことのある方も多いのではないでしょうか。

エイはサメから底生生活に適応進化した系統の一つとされていますが、トビエイの仲間は二次的に遊泳生活に戻った種類と考えられています。つまり、泳ぐことがトビエイの仲間の大きな特徴なのです。伊豆半島沿岸では、トビエイの興味深い行動が確認されています。伊豆半島沿岸では、トビエイは春から夏にかけて見られますが、時に数十尾の群れを成して海中を遊泳します。トビエイは、大きくなると1mにもなるので、その泳ぐ(飛ぶ)光景は迫力満点です。西伊豆町安良里沿岸の水深20〜30mの岩礁では、毎年、水温が20℃くらいの5月から7月にかけて、このトビエイの群泳を見ることができます。それは、ここを訪れるダイバーの楽しみの一つになっており、トビエイの習性が地域のダイビング産業に一役買っているといえます。

トビエイが群れる理由は定かではありません。しかし、安良里に隣接する同町宇久須沿岸の水深5〜20mの砂地では、8月から9月にかけて、30cmほどのトビエイが頻繁に見られます。これと、水族館でのトビエイの赤ちゃんの飼育例から、この小さなトビエイはおそらくその年生まれの赤ちゃんと考えられ、群泳が何らかの形で繁殖と関わっているのではないかと想像が膨らみます。さらに、秋から冬には伊豆半島周辺では見かけません。どこへ行ってしまうのか。まだまだトビエイは謎の多い魚なのです。

(水産技術研究所水生生物多様性プロジェクトスタッフ副主任 霜村胤日人)

 

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