水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ 植物プランクトン
植物プランクトン (平成19年4月6日 掲載) ― 深層水で大量培養 ―
駿河湾には多種多様な植物プランクトンがいます。その細胞の大きさは最大でも0.1mm程度なので、人間の目に触れることはほとんどありません。もちろん、直接利用することもありません。しかし、駿河湾の魚介類の餌となることで、私たちは植物プランクトンを間接的に利用しているのです。 間接的にしか利用していない駿河湾産植物プランクトンの中から、有用種を探し出して大量培養し、直接利用する研究が進んでいます。これまでの研究で、アワビ稚貝の餌となる種や、人間の体内に発生する活性酸素を消去する物質を産出する種、ユーカンピア=写真=などが見つかっています。さらに、サプリメントでもおなじみのエイコサペンタエン酸(EPA)などの不飽和脂肪酸を多く含む種も見つかりました。 しかし、どんなに有用な種であっても、わずかな量では利用することができません。どうしても大量培養が必要なのです。ふつう、海の植物プランクトンを大量培養する時は、海面近くの海水を利用しています。しかし、その中にはさまざまなプランクトンや細菌などの異物が多く含まれるので、大掛かりな装置を用いて海水をろ過して、さらに薬品で処理する必要があります。また、植物プランクトンの繁殖に必要な栄養素が少ないので、肥料を加えなければなりません。 一方、駿河湾深層水は清浄で異物の混入が少なく、栄養素が豊富に含まれています。したがって、簡便なろ過装置で異物の除去ができ、肥料を加えなくても植物プランクトンを大量に培養することができるのです。さらに、重金属や化学物質などの有害物質もほとんどないので、培養した植物プランクトンは安全性も高いと考えられています。 アワビ稚貝の餌となる種では大量培養が可能となり、アワビ稚貝の飼育に応用されています。その他の種についても、大量培養とその有効利用に関する研究を進めています。近い将来、大量培養した駿河湾産植物プランクトンを原材料とした食品や薬品などを身近に使う時代が来ると思います。 (水産技術研究所主任研究員 花井孝之)
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