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カタクチイワシ (平成18年12月5日 掲載)

人気のシラス、成長すると・・・

カタクチイワシ

(社)全国まき網漁業協会「かたくちいわし」より

「神童も過ぎればただの人」と言われますが、子供の時は評価が高かったのに大人になると一転評価が低くなることは魚の世界でもよく見られます。もっとも、この場合、本人(魚)には全く責任はなく、人間たちの勝手な評価なのですが。

店頭では「せぐろいわし」とも言われるカタクチイワシもそのような魚の一つです。日本近海でサバ、アジと日本一を競うほどの漁獲量がありながら、その多くが養殖の餌とされ人間に食べられることなく消えていく不遇な魚です。時には市場で買う人もなく、本当にタダの魚になることもあります。一方、この魚の子供の方は「しらす」として絶大な人気があります。一般に魚類の稚魚はシラスと称されることが多いのですが、店頭に並ぶ「しらす」はほとんどがこのカタクチイワシの稚魚です。

カタクチイワシは非常に魚体が弱く、死後、短い時間で筋肉が酸性になってしまうため鮮度低下が非常に早い魚です。また、内臓には強力な消化酵素があるため、お腹の部分がすぐに溶けてしまいます。さらに、体が小さいため頭や骨、内臓を取るのは大変手間が掛かります。丸干し(めざし)にして、骨や内臓も丸ごと食べれば良いのですが、最近の消費者は骨や苦い内臓を敬遠しがちです。そのため、カタクチイワシの稚魚である「しらす」に比べ評価が大変低くなってしまいます。そこで水産試験場では、骨や内臓が気にならない加工方法を開発して食用魚としての評価を高めるように研究を進めているところです。

カタクチイワシは本来美味しい魚で、他県では主に煮干や丸干しに加工されており、県内ではいわし節に加工されています。静岡県は日本有数のかつお節やさば節の産地ですが、いわし節も隠れた特産品の一つです。かつお節の風味、さば節の濃厚さに対し、いわし節はコクのある旨みが特徴で、最も美味しいダシが取れると言う人もいます。いわし節は他の節とブレンドされ、混合削り節やだし調味料に加工されることが多く、単品を簡単に入手できないことが残念ですが、見かけることがありましたら是非お試しください。

(水産試験場利用普及部 主任 高木 毅)

 

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