水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ マダイの産卵
マダイの産卵 (平成18年11月7日 掲載) 4−6月水温上昇で盛期に
マダイは姿、色、味ともに優れ、特に産卵期となる春には脂が乗り1年の中で最も美味しくなります。また、マダイはこの時期に沿岸の浅い海に集まり、食欲が旺盛で釣りの格好の対象ともなっています。 このように私達には馴染みの深いマダイは採卵や飼育が容易な魚の一つで、古くから稚魚の放流による増殖事業(栽培漁業)の対象魚種となっています。静岡県沿岸には100万尾程度の稚魚が毎年放流されています。私達のプロジェクトでは、この栽培漁業が天然魚群へ影響を与えているのか、与えていないのかを遺伝子のバラエティをもとに研究を行っています。この研究を進める上で分かった、放流される魚を育てる上で基礎となる、陸上の大型水槽で飼育したマダイの産卵量の推移と水温などを紹介します。 水槽のマダイは3月頃から産卵を始め、水温の上昇とともに産卵数を増やし、5月から6月にかけて産卵数が最大となり、7月下旬には産卵を終了します。卵は直径約1mmの分離浮遊卵で、水槽内で受精し、水面に浮いています。雌雄あわせて76尾、約100Kgを収容した水槽から回収される1日当たりの卵の重量は最大で3Kg、卵数で6百万粒以上となり、満4才の雌1尾当たりの産卵数は15万粒程度となります。また、1日当たりの産卵数が100万粒以上となる期間を産卵の盛期とすると、4月下旬から6月下旬の約2か月間にもわたります。産卵数と飼育水温との関係を調べると、水温が15℃を超えた時期から産卵が始まり、17.5℃から21.5℃までが産卵の盛期で、22℃を超えた時期から産卵は終息へと向かいます。また、産卵期間中の飼育魚の食欲は旺盛で、魚粉に様々な栄養素を添加して粒状に整形した配合飼料を毎日2Kgも食べてしまいます。 このように、マダイは産卵期間中に大量の餌を食べて大量の卵を産んでいます。海でも同じように大量の卵が産まれているのでしょう。今後も大型水槽でのマダイの産卵に関する調査を継続する予定です。産まれた卵について個々の親子鑑別や産卵日ごとの遺伝子のバラエティの時期による変化などを調べていきます。 (水産試験場水生生物多様性プロジェクト 主任研究員 阿久津哲也)
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