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深海性のムツ (平成18年10月3日 掲載)

新養殖魚種として有望

深海性のムツ

ムツの幼魚(子ムツ)

ムツは、刺し身、煮付け、塩焼きなど料理用途が広く、非常においしい魚です。成魚は水深数百mに生息し、全長1m、体重10kgを超える大型の深海魚で、「底立てはえなわ」などで漁獲され、市場でも高値で取引されます。このムツの幼魚は、全長15cmほどまでは子ムツと呼ばれ、浅い沿岸域に生息し、定置網に入ったり岸壁で釣られたりしています。

現在、静岡県の海産魚類養殖は、沼津地区を中心に、多魚種・少量生産を行っている経営体が多く、マダイ、マアジ、ブリ類、ヒラメ、サバ類、トラフグなど多くの魚種を扱っています。このため、他産地にはない魚種を養殖できるようにすることで、経営の安定と競争力の強化を図ることが期待されています。養殖用種苗が手に入りやすく、また、他では生産されていない高級魚である「ムツ」は新養殖魚種として有望と思われます。

水産試験場では、沿岸の定置網に入った子ムツを種苗として飼育し、商品価値の高いサイズまで育てる試験を行っています。深海性の魚ですが、今までの試験で浅い養殖生簀でも飼育することができ、10〜15cの種苗が1年間で300cほどまで成長し、活魚で出荷できることがわかりました。一方、ムツは非常にうろこが取れやすく、定置網の中で網や他の魚と擦れると、うろこがほとんどなくなり弱ってしまうため、魚の取り扱い方法が問題となります。また、眼球に異常が生じて餌を食べなくなってしまったり、鋭い歯により体表を傷付け合って死んでしまうなど、課題も多くあります。

今後、これらの課題を克服することによって、ムツが新たな養殖魚種となり、すでに養殖生産量全国1位を占め静岡県の養殖特産種ともいえるマアジとともに、静岡県の養殖魚種の一つとして養殖業界を支える存在になればと思っています。

(水産試験場沼津分室  副主任 松山 創)

 

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