水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ マダイ
マダイ (平成18年9月5日 掲載) 稚魚、毎年100万尾以上放流
毎年6月中旬になると伊豆半島のいくつかの漁港内のいけすでマダイ稚魚の飼育が始まります。この稚魚は県内で漁獲された天然のマダイが産んだ卵を人工ふ化飼育しさせたもので、このいけすで約50日間育成されて8月上旬に約6cmに成長すると伊豆半島各地先に放流されます。このように、稚魚を放流することで魚の資源を増やす「栽培漁業」は各地で行われており、毎年100万尾以上のマダイ稚魚が県内の海に放流されています。 海に放流された稚魚には、自然界の厳しい生存競争が待っています。そのため、できるだけ多くの稚魚が生き残るように、稚魚の生息に適した水深が浅く餌が豊富な場所を選んで放流します。また、放流後に稚魚がその場に長く留まるように、音で呼び集めて餌を与えたり、海の中に稚魚の住み場所の魚礁を造成することも行われています。漁師さんは、稚魚を放流した場所でマダイを獲らないようにしたり、小さいマダイが獲れても再放流するような資源管理を行っています。 マダイ稚魚の放流を続けてきた結果、県内沿岸のマダイ資源の約30%が放流魚で占めるようになりました。また、昭和20年代に400トン程度であった漁獲量が一時は50トン以下に減少していたのですが、最近では漁業や遊漁により300〜400トンが漁獲されるまで増えてきています。このような漁獲量の増加は、放流魚が漁獲されているだけでなく、放流した稚魚が成長して産卵することでマダイ資源を増やしているためと考えられます。 今頃の伊豆半島の漁港では、この夏に放流して10cmくらいに成長したマダイ稚魚を目にすることがあります。今は自然の荒波を乗り越えるための力をたくわえている時ですので、やさしく見守り何年かしてまた会う日を楽しみにしていてください。 (水産試験場伊豆分場主任研究員 高木康次)
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