水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ ヤマトイワナ
ヤマトイワナ (平成18年6月6日 掲載) ニッコウイワナ放流で激減
河川の源流域に生息するイワナには、地方種と呼ばれるいくつかの亜種が存在します。静岡県では、大井川水系と天竜川水系にヤマトイワナと呼ばれるイワナが分布しており、全国的にみてもその分布は本州中部相模川以西の太平洋に注ぐ河川、琵琶湖へ流入する河川及び熊野川水系に限られています。 ヤマトイワナは近年著しく減少しており、静岡県レッドデータブックに絶滅危惧IB類として登録されています。これは、イワナの亜種で本来静岡県に生息していなかったニッコウイワナが頻繁に放流されてきたことが原因と思われます。 ヤマトイワナは、外見的な特徴として、側線上下に朱紅色の斑紋を持つことと、体側部の白い斑紋が少なく不明瞭な点があげられます。一方、ニッコウイワナには、体側部と背中に白い斑紋が散らばり、また、側線上下には白あるいは黄色の斑紋があります。 イワナは川面に落下した陸生昆虫や河川に生息する水生昆虫を主な餌としています。餌料生物をめぐるヤマトイワナとニッコウイワナの競合関係を知るために、両者の食性を比較しました。大井川で夏季に採捕したイワナは水生昆虫より陸生昆虫を多く食べており、陸生昆虫はイワナにとって重要な餌になっていました。また、ヤマトイワナは同じ大きさのニッコウイワナよりも陸生昆虫を食べている割合が少ない、という傾向がみられました。すなわち、餌の競合関係においてはヤマトイワナがニッコウイワナに比べ劣勢であると推測されました。したがって、ニッコウイワナを間引けば、落下昆虫がヤマトイワナへ多く配分され、餌料環境が向上すると考えられます。 さらに、井川漁業協同組合では、在来のヤマトイワナを増やすため、源流域で採捕したヤマトイワナから育てた種苗を放流しています。 (水産試験場富士養鱒場主任研究員 川合範明)
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