水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ 漁場の底泥調査
漁場の底泥調査 (平成17年10月4日 掲載) 生物の種類、量で環境判断
駿河湾奥部に位置する沼津市の静浦から西浦へかけての内浦湾沿岸は、イワシ等が豊富に水揚げされることから、ブリ、マダイ、マアジなどの海面生簀での養殖が昭和35年頃から行われてきました。当初はきれいであった海域でも永い間養殖を続けていると、餌の残りや魚の糞などが海底にたまって環境が悪くなり、飼っている魚に病気が発生したり成長が悪くなることがあります。これを自家汚染と呼びます。本来、海には自浄作用があり、残餌や糞も海中や海底の生物によって消費され、きれいな環境が保たれます。ところが、そのバランスを越えた過剰な残餌や糞が発生すると、特に海底部分での酸素が不足して底生生物が生存できなくなり環境が悪化します。漁場を永続的に利用するためには、水質や底質の状態を把握し、適切な規模での養殖を心掛けなければなりません。 水産試験場では養殖が開始された直後から海水の溶存酸素量、COD(化学的酸素要求量=水の汚れを表す尺度)などの水質調査を行い、適正な養殖が行われているか否かを判断してきました。さらに、平成13年度からは漁場直下の底泥の調査を開始し、水質、底質両面から環境の把握を行っております。 このうち底質調査では、船の上から採泥器(エクマンバージという小型のもの)で海底の砂や泥を採取し、その中の生物の種類と量を調べ、種類数と量が多ければ底質環境が「良好である」、逆に少なければ「汚染されている」といった判断を下します。 現在内浦湾の10点で年2回調査を行っています。西浦地区などの湾口部では甲殻類、貝類など大型生物が多く「良好である」と判断されるのに対し、湾中央部から湾奥部にかけては多毛類(イソメ、ゴカイ等)に変わり、若干ながら「汚染されている」と判定されるきざしもみられ、注意を要します。 また、底質中の硫化水素量の調査も併せて行っており、きれいな水の中で、健康で美味しい養殖魚が作られるように協力体制を築いていく必要があると考えます。 (県水産試験場沼津分室 藤田 信一)
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