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カジカ (平成17年6月7日 掲載)

陸封、両側回遊性が存在

カジカ

水底を移動するカジカ

渓流魚というとアマゴやイワナがすぐに思い浮かびます。これらサケ科魚類は、流線型のいかにも渓流魚といった容姿と、険しい山地の急流域に生息することから、「渓流の女王」や「幻の魚」とも呼ばれます。実は、同じ山地渓流域にはサケ科魚類とは似つかないカジカという魚がいます。カジカはハゼとよく似ていますが、分類上ではカジカ目カジカ科とスズキ目ハゼ科の違いがあり、腹鰭が吸盤状でなく分かれているという特徴があります

写真にカジカが写っていますが、石と非常によく似ており、注意して探さないと見つけられません。カジカは、サケ科魚類のように素早く泳ぐことができず、水底を少し泳いでは立ち止まりして移動します。これは、強い流れに流されないようにも、じっとしていて外敵に見つからないようにも見えます。

富士養鱒場内の河川にもカジカが生息しています。普段は石の下に住み、小魚や川虫などを食べていますが、繁殖期の三月〜五月には、瀬の石の裏側に、直径三〜四mm、うすいオレンジ色をした卵を密集して産み付けます。卵が孵化するまでの約一ヶ月、雄が卵を守っている様子が観察されます。

富士養鱒場のカジカは一生を川で過ごす陸封型ですが、カジカには海と川を行き来する両側回遊型も知られています。この回遊型の卵は直径二〜三mmと陸封型に比べて小さいことから、回遊型を小卵型、陸封型を大卵型とも呼びます。小卵型カジカは、孵化して海に下り、浮遊生活をして成長し底生生活に適した形になって川を上ります。一方の大卵型カジカは、底生生活に適した大型稚魚で孵化し、直ちに川の砂礫底で生活します。陸封型は回遊型が海から隔離されたものと考えられていますが、最近の研究では両者は別種という報告もあります。

本県のカジカは、生息河川も生息数も減り、現在では静岡県レッドデータカテゴリーの準絶滅危惧種となっています。特に海に下る回遊型は、遡上を阻む堰などの影響もあり、減少が著しいようです。

(水産試験場富士養鱒場 技師 中村永介)

 

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