水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ 海の中の渦
海の中の渦 (平成16年7月6日 掲載) 黒潮蛇行の引き金に
ここに、見慣れない図を示しました。これは、宇宙(人工衛星)から測定した海面の高さを表したものです。赤色が強いほど海面が高く、青色が強いほど低くなっています。海面が高い海域と低い海域との高低差は1m以上にもなります。このような海面の高低差は、海の中のうず渦を示しています。海面が高く盛り上がった海域は海水温が高く、時計回りのだんすいうず暖水渦が観測されます。これは大気の高気圧によく似ていることから「高気圧性の渦」とも呼ばれます。三陸沖の暖水渦の周りにカツオの好漁場が形成されることはよく知られています。反対に海面が低くへこんでいる海域は海水温が低く、反時計回りのれいすい冷水うず渦が観測されます。これは、大気の低気圧になぞらえて「低気圧性の渦」とも呼ばれます。 このような冷水渦が、黒潮の蛇行の引き金になっているという説が最近発表されました。それによると、日本の東方はるか沖合の海域で発生した冷水渦が南西に移動し、その後毎時25m程度の早さで西に伝搬して、四国や九州の沖で黒潮の下に潜り込むことにより、黒潮に小蛇行を引き起こし、九州沿岸にはれいすい冷水かい塊(冷水渦の一種)が表れます。そして、この小蛇行が黒潮に沿って東に伝わることにより、遠州灘沖の黒潮の蛇行に発達し、えんしゅうなだおき遠州灘沖れいすい冷水かい塊が発生するというダイナミックな説です。 黒潮の流路変動や遠州灘沖冷水塊の消長は漁業に大きな影響を及ぼすため、水産試験場では、気象衛星NOAAを利用した人工衛星画像システムや静岡県沿岸に4基設置した多機能型観測ブイ(マリンロボ)などを活用して海洋観測を続け、リアルタイムで精度の高い水温や海面の流れ等の情報提供に努めて行きたいと考えています。人工衛星による水温画像やマリンロボの海洋情報は水産試験場のホームページ(https://fish-exp.pref.shizuoka.jp/)から見ることができます。 NOAA衛星画像はこちら (クリックするとNOAA衛星画像ページにジャンプします) (県水産試験場 主任研究員 海野幸雄)
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