水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ ク エ
クエ (平成16年1月6日 掲載) 幼魚を放流、生態調査
ハタの仲間は非常に種類が多く、全世界では400種以上の生息が確認されています。ほとんどが全長50cmを超えるほどの大きさに成長し、水深200m以浅の岩の上や隙間に単独で生活しています。群れることなく生活するために網よりも釣りで漁獲されることが多く、肉質がくせのない白身であることから刺身や煮魚など様々な料理に利用されています。日本の周辺には約40種類のハタが生息していますが、いずれも尻びれや尾びれが大きく目立ち、「ひれ」を古くは「羽根」と称したことから「羽根」の太い魚として「羽太」と名づけられたといいます。 クエは全長150cm、体重100kgにもなる横綱級のハタで体表に九つの絵の模様があるように見えることからクエ(九絵)と名づけられたといいます。大型のものはモロコとも称され、大物釣の対象魚としても人気があります。秋から冬が旬で、ハタの中では最も美味とされています。全国的に漁獲が少ないこともあって、1kg当たり1万円ほどの高値で取引されることもあります。この幻の魚は、ちゃんこ鍋の最高級食材として珍重され、大相撲の優勝の祝いの席には欠かせない魚として全国から苦労して調達されているようです。内臓はスタミナ源として、皮、骨、目玉は珍味として、クエにとってはハタ迷惑な話でしょうが、余すところなく食されています。 このクエの幼魚を放流し「魚の横綱」を増やそうと、県温水利用研究センターで種苗生産研究が行われています。雌雄同体で、幼い頃は全てが雌で成長に伴い雄に性転換することから親魚の確保が難しいこと、ふ化したばかりの稚魚は他の魚に比べて小さいことなどから、種苗生産が困難な魚でしたが、近年は安定して生産することができるようになりました。県では人工生産されたクエの幼魚に標識を付け放流し、移動や成長などの生態を解明するための調査を実施しています。 (静岡県水産試験場主任研究員 平井一行)
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