水技研らいぶらりぃ 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ 海の小さな掃除屋
海の小さな掃除屋 (平成15年2月24日 掲載) 「海の掃除屋」ヨコエビ
海にはたくさんの生き物がすんでいますが、それらの生き物が死んだ後、その死骸はどうなるのでしょうか。実は、海には魚などの死骸を食べる生き物が種類、量とも多く生息していて、死骸をすぐ食べてくれるのです。そのため海底に死骸がたくさん堆積してしまうということはありません。 今回は、そんな「海の掃除屋」のひとつであるヨコエビをご紹介します。ヨコエビの仲間はエビやカニと同じ甲殻類ですが、エビとは全く違うグループに属し、大きくても体長2pくらいで、エビを横から押しつぶしたような扁平な形をしています。海、河川、湖沼、温泉(!)と、いろいろな所で発見されていて、海だけでも渚から水深数千メートルもの深海にまですんでいる環境への適応性に優れた生物です。食性も、前述のように死骸だけでなく海藻を食べるものや砂泥中の有機物を食べるものなど、多様です。また、浜名湖には海藻の周りで暮らすヨコエビがいますが、ノリ養殖業者にとっては「異物混入」の原因となってしまう厄介者でもあります。 研究があまり行われていないため、正式な名前さえついていないものもたくさんいますが、ヨコエビのような「海の掃除屋」は海底をきれいにするだけでなく、もっと重要な役割を果たしています。ヨコエビの糞や食べこぼしは、ほかの小さな生き物(バクテリアなど)に分解され、海水中に栄養分となって溶け出します。この栄養分は植物プランクトンに吸収・利用され、さらにその植物プランクトンを食べる動物プランクトンや魚につながる「海の食物連鎖」の一端を担っています。そして、私たちが魚介類を食べることで最終的には人間にもつながっているのです。 ヨコエビは目立たない存在で謎の多い生き物ですが、海の中にはこのような縁の下の力持ちともいえる生き物たちがいて私たちの生活を支えていることを時々思い出してみてください。 (水産試験場浜名湖分場 技師 松浦玲子)
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