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自発給餌システム (平成14年12月23日 掲載)

食欲や健康状態判明

ニジマス稚魚の摂餌リズム

ニジマス稚魚の摂餌リズム
(1時間毎の作動回数÷1日の総作動回数×100)

養殖業では給餌作業が労力的にも大きなウエートを占め、その労力を軽減するため自動給餌機が利用されてきました。自動給餌機は、人がタイマーをセットすることにより目的の時間に餌を池に落下させる機械です。自動給餌機は作業の省力化には有効ですが、機械任せでは魚の状態を十分に把握できないことになります。

そこで、給餌の労力も軽減でき、さらに魚の状態も把握できるような給餌のシステムが望まれ、自発摂餌機が考案されました。自発摂餌機は、自動給餌機のタイマーを魚が自由に操作できるスイッチに替えたものといえます。すなわち、魚が自ら機械を動かすので(「摂餌」という表現からも魚が主体であることが伺えます)、機械の作動状況をみれば魚の食欲がわかります。その結果、おおよその魚の健康状態も分かることになります。

「魚がスイッチと餌との関係を学習できるほど頭がいいのか」と疑問に思うかも知れませんが、水族館などの魚の芸でも分かるように魚も結構頭がいいものです。

富士養鱒場ではニジマスを使って自発摂餌システムの導入に関する研究を行っていますが、センサーが疑似餌のような役目をするため、飼い始めてすぐにセンサーにかみつくようになります。そしてセンサーと餌との関係をすぐに理解し、センサーを引っ張れば餌が落ちてくることを学習します。成長の具合も自発摂餌で自動給餌や手撒き給餌と遜色ない飼育成績を得られることが分かっています。

この図は自発摂餌機に、システム稼働時刻の記録装置を取り付けてニジマス稚魚の摂餌リズムを調べた結果です。摂餌のピークは朝方と夕方にあり、夜間はほとんど摂餌をしないということが明確に示されています。

このように、自発摂餌による飼育は他の給餌法と遜色ない成績を得られるだけでなく、魚の摂餌生態を理解する上でも非常に有効なシステムといえます。自発摂餌システムを養殖業に普及させることによって、作業の省力化だけでなく、摂餌リズムの変化による病気の早期発見などにも役立つものと期待しています。

(水産試験場富士養鱒場主任 青島秀治)

 

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