静岡県水産・海洋技術研究所 浜名湖分場


魚病情報

 魚病情報 パンくずリスト矢印 ウナギの疾病 パンくずリスト矢印 ウイルス性血管内皮壊死症(鰓うっ血症、棒状出血症)

ウイルス性血管内皮壊死症(鰓うっ血症、棒状出血症)

<原因>

ウイルス性の疾病であり、病原ウイルスは、電子顕微鏡によって確認された形 態や細胞内での存在位置から、アデノ様ウイルスに類似していると考えられている。このウイルスは血管の内面を覆う細胞(内皮細胞)を選択的に侵し、その結 果として全身のうっ血や出血などの病変が生じる。
現在本ウイルスの性状等は不明な点が多いが、最近本ウイルスに感受性のある培養細胞が樹立され、本ウイルスの分離に成功したとの報告があった。今後の研究の進展が期待される。

<症状>

本疾病の最も特徴的な症状は、鰓弁の中心静脈洞のうっ血により、肉眼的に鰓 弁中心部に血のすじが確認できることである。外見的特徴としては鰓蓋と鰭の発赤である。とくに胸鰭や鰓孔部の発赤は発病初期から現れる。やがてその発赤は 鰓蓋全体や腹部でも見られるようになる。また、鰓蓋部が膨満しておたふく様を呈することもある
解剖による内部所見では、肝臓が広範囲にわたる出血のため赤黒く変色しているものや、腹腔内の出血や腹水の貯留のあるものが認められる。

<治療>

原因ウイルスの性状が不明なため、決定的な対策はまだ無い。
現在治療法としては、飼育水温を35℃前後に4〜7日間昇温する方法が行われている。同時に餌止めすることもある。この高水温による飼育方法は、発生初期の段階では一時的に死亡魚は急増するものの、終息を早 め被害の拡大を防ぐことから効果があるとされている。しかし飼育水温を下げると再発することもあり、この高温飼育は根本的な治療方法ではない。

 

参考文献

小野信一:ウイルス性血管内皮壊死症(鰓うっ血症).養殖20019月号
山本伸一:養殖魚のウイルス病対策 ウナギ.養殖19966月号

血管内皮壊死症病魚の外部症状
 
血管内皮壊死症病魚の内部症状
血管内皮壊死症病魚の外部症状
胸鰭、鰓孔部および腹部に発赤がみられる。
  血管内皮壊死症病魚の内部症状
肝臓に赤黒い出血点が見られる。
また、腹腔内に出血している。
左下(鰓):鰓弁に血液による赤いすじが見られる。
正常なウナギの鰓の組織像
 
血管内皮壊死症のウナギの鰓の組織像
正常なウナギの鰓の組織像
左:鰓を縦に切った像
右:鰓を横に切った(左の黒い線で輪切りにした)像
  血管内皮壊死症のウナギの鰓の組織像
左:鰓を縦に切った像
右:鰓を横に切った像
血管内皮細胞がウイルスに侵され壊死したため、
鰓弁の中心静脈洞に血液が貯留(うっ血)している。
原因ウイルスの電子顕微鏡像
   
血管内皮細胞内に見られた原因ウイルスの電子顕微鏡像    

 

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