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養殖ウナギ (平成19年2月5日 掲載)

水温制御で病気に強く

養殖ウナギ

養殖池で餌を食べるウナギ

ウナギは水温が10℃以下になると餌を食べなくなり、8℃以下では冬眠します。現在のようなハウスのない露地池で養殖していた時代には、ウナギの成長は季節や天候に左右されていました。特に冬季の成長はあまり望めず、出荷サイズの約200グラムまで成長させるのに1年半以上かかっていました。一方、ボイラーで飼育水を温め、調整した水温で飼育する現在のハウス加温養殖では、冬季に採捕したシラスウナギを25℃以上の水温で飼育し、成長の早いものでは約半年後の「土用の丑」には出荷できるようになりました。

ハウス加温養殖は普及から20年が経過し、現在では安定した生産ができるまでに技術が向上しました。そこで水産試験場では次のステップとして、ハウス加温養殖の利点である水温調整を病気対策に利用することを考えました。魚は変温動物で、飼育水温が上昇すれば、それに伴い魚体温も上るということを利用しました。

ウナギに対してある種のウイルス病を水温別に感染させたところ、通常の養殖適水温である27℃〜31℃に比べ、35℃の方が生き残る割合が高くなりました。さらに検討を進めると、短期間(3日間以上)35℃に水温を上げただけで、ウナギが病気に対して強くなることがわかりました。強くなるメカニズムは現在のところ明らかではありませんが、これにより医薬品を使用しないで病気の被害を軽減することが可能となりました。実は、これまでにもニジマスやギンザケでも一定期間、飼育水温を上げることで病気の被害が軽減できることが実験的に明らかにされていました。しかし、流水で飼育するこれらサケ科魚類では、大規模な養殖場の水温を制御するのは実用的には難しいことです。

魚の養殖では成長を促進するために飼育水温を制御してきましたが、ウナギではその水温制御が、今回試験したウイルス病に限らず、多くの疾病に効果があることがわかってきました。このように、魚が変温動物である利点を生かした養殖方法の開発をさらに進め、より安全な養殖魚を食卓に提供できるよう、養殖業者と共に努力していきたいと考えています。

(水産試験場浜名湖分場 研究主幹 田中 眞)

 

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