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ケイ藻赤潮 (平成18年8月1日 掲載)

アサリが美味しくなる

ケイ藻赤潮

今年春の赤潮の原因となったケイ藻(顕微鏡写真)

赤潮という響き…どうも「悪いもの」というイメージがありませんか?実際、私が小学校で受けた授業では、「工業地帯や人工密集地周辺の海で富栄養化が進み赤潮が発生する」という説明で、海面を毒々しく真赤に染めた赤潮写真が資料集に掲載されていました。

しかし赤潮とは、海面が赤くなることだけを指すのではありません。海中の植物あるいは動物プランクトンが大発生し、海面の色が通常とは違う色となった状態を指すのです。ところが、この定義はあまり知られておらず、やはり「赤潮=赤(朱)=海が汚い」ととらえられてしまう傾向があるようです。

また、赤潮の色は、新聞にたびたび掲載される夜光虫の朱色だけではないのです。実際は地味な深緑、赤褐色、茶色などさまざまで、これらの色の違いはプランクトンの種類の違いによるものですが、顕微鏡で見ないと原因種はわかりません。赤潮には原因種によって漁業被害の生じるものや、被害の出ないもの、そして水産業にとって有益なものがあります。

ところで、今年の浜名湖は春先から5月末まで湖水が茶色に濁っていました。「茶色の濁り?キタナイ!」と言わないでください。この濁りも赤潮ですが、アサリの餌となるケイ藻という植物プランクトンが大増殖していたのです。茶色の浜名湖を見て「この濁りは何?」と誰かに聞かれるたびに「アサリの餌です」と誇りを持って答えていました。これこそ有益な赤潮の代表選手です。今春のアサリは身もプリプリで、ダシも良く出て最高でした。今年のように潮干狩りの時期とケイ藻赤潮の発生が同時期になることはめったにありません。春に浜名湖へ潮干狩りに行かれた方、浜名湖アサリを召し上がった方、今年は大当たりでしたね。

植物プランクトンは水中の窒素、リンなどの汚れを栄養分として繁殖し、動物プランクトンや魚介類の稚仔、二枚貝の餌となります。それらはより大きな生物の餌となり、海の生物生産や物質循環が成立するわけです。プランクトンが大発生する赤潮は、決して悪いものばかりではないことを知っていただきたいと思います。

(水産試験場浜名湖分場 副主任 松浦玲子)

 

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