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 水技研らいぶらりぃ パンくずリスト矢印 水技研デジタルアーカイブス:さかなあれこれ パンくずリスト矢印 繁殖戦略

繁殖戦略 (平成17年11月1日 掲載)

体内で卵を保護する魚種も

生まれて間もないウミタナゴの稚魚

生まれて間もないウミタナゴの稚魚

多くの魚は卵を水中に放出するため、子供の生き残る率が悪いという欠点を持っています。そのため、卵の数を増やし少しでも多くの子孫を残そうとしています。マダイが一年間に産む卵の数は約300万粒といわれ、卵や仔魚のときにほとんどが他の魚の餌になり親になるのはわずか2尾くらいです。また、ハゼやスズメダイの仲間のように岩などに卵を産み付け親が保護をすることにより生き残りを高めている種類もいます。産み付ける卵の数は水中に放出する種類よりも少なくなっております。

スズメダイの仲間は雄が生みつける場所(巣)の掃除をして、近くを通りかかった雌に求愛し雌が気に入れば巣に呼び込み産卵、受精させます。このため一尾の雄の巣には数尾の雌の卵が産み付けられています。こうすることにより、卵の生き残りを良くすると同時に、複数の親の遺伝子を残し環境の変化に対し強くするという効果があり、すばらしい仕組みとなっています。

親の保護のもっと進んだ形は体内受精で、ふ化するまで雌の腹の中で保護するという特殊な繁殖形態を取る種類がいます。カサゴやウミタナゴの仲間がこれで、特にウミタナゴの子供は半年もの長い間母親の腹の中で成長します。生まれてくるときには4〜5cmになっており親とほとんど同じ生活ができます。ウミタナゴの雌は交尾すると精子の入った袋を受け取り、母親の体内の卵が成熟するのを待ちます。成熟するとそれで受精して子供が生まれるのです。最近の研究で生まれてきた子供の遺伝子を調べた結果、同じ母親でも子供の父親はみな同じというわけではないことがわかりました。雌親は一尾だけでなく数尾の雄と交尾していたことになります。これもスズメダイと同様に種の保存にとって有利な繁殖戦略といえます。

カサゴは1シーズンに数回子供を産みます。そしてウミタナゴと同様に交尾し雌の体内でふ化した後、魚の形で生まれてくるのです。ウミタナゴの場合は複数の雄に由来する子供が生まれていましたが、カサゴの場合はどうなのでしょう。そして繁殖戦略はどのように組み立てられているのでしょう。生物のしたたかな生き残り戦略を見るにつけ頼もしさを感じます。

(県水産試験場 水生生物多様性プロジェクト 研究主幹 川嶋尚正)

 

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