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シラスと黒潮大蛇行 (平成17年7月5日 掲載)

産卵に影響?水揚げが減少

シラスと黒潮大蛇行

出漁のため一斉に港を出るシラス漁船=静岡市用宗港

静岡県において、年間50−60億円程度の水揚げがあるシラス漁業は、海面漁業生産額の約1割を占める重要な沿岸漁業です。全国的にも有数の産地で、全国生産量の約13%(平成元〜14年平均)を占めています。しかし16年は静岡県シラス水揚量が2,754トン(水産試験場調べ)と過去10年平均(7,997トン)の34%に過ぎず、記録的な不漁となりました。その原因の一つとして16年夏季に発生した黒潮大蛇行が疑われています。

黒潮大蛇行とは遠州灘沖に冷水域(周辺より水温の低い海域)が拡大・滞留し、黒潮がそれを迂回するように四国沖から遠州灘で大きく南へ蛇行する現象です。蛇行部の最南端は静岡県沿岸から300km以上南になります。大蛇行時の特徴として、静岡県沿岸が黒潮系水で覆われることが挙げられます。近年では昭和35−38年、50−54年、62年、平成2年に黒潮大蛇行が発生しています。

シラス漁業では、過去に大蛇行の発生した年はその前後と比較して3割以上水揚量が減少しています。その原因は十分に解明されていませんが、栄養塩の少ない黒潮系水が接岸することでシラスの餌生物の増殖が阻害された可能性や、親のカタクチイワシの好む沿岸水が縮小し産卵生態に悪影響が出た可能性が挙げられ、これらの理由から大蛇行時に不漁になるのではないかと考えられています。しかし、16年の不漁は過去の大蛇行時と比べてもシラス水揚量が少なく、これらの理由だけでは十分に説明ができません。

静岡県ではカタクチイワシシラス(以下カタクチシラス)とマイワシシラス(以下マシラス)が主に漁獲されていますが、過去の大蛇行時にはカタクチシラスだけが大きく減少していました。マシラスは昭和50年代から63年まで春先に多く漁獲されていたのですが、平成以降のマイワシ資源減少に伴って激減し、現在はカタクチシラスが漁獲のほとんどを占めています。16年は、カタクチシラス中心の時代に黒潮大蛇行が発生したことや、カタクチイワシの産卵盛期である初夏に大蛇行への変化が始まったことなどが前述の不漁原因に加わり、記録的な不漁となったのではないかと考えられます。

(県水産試験場漁業開発部副主任 鈴木朋和)

 

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