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卵胎生のカサゴ (平成16年12月7日 掲載)

種苗生産へ餌の研究開発

産仔直前のカサゴ

産仔直前のカサゴ

カサゴは、日本全国で高級魚として人気があるおいしい魚です。岩礁域の海底で生活しているため、大量に漁獲されにくいので、比較的値段が高い魚です。

カサゴは、全長3.5〜4.5mmの「魚の形で産まれる」という、他の多くの魚にない特徴があります。これは「卵胎生」と呼ばれる繁殖の方法で、オスとメスの親魚が交尾し、メスの体内で卵がふ化し、魚として産まれます。卵胎生の魚には、カサゴと近い仲間のメバル、またウミタナゴなどがいますが、卵で産まれる魚に比べ種類が少なく、珍しい生態をもつ魚といえます。

高級魚のカサゴを種苗放流して増殖させたいという伊豆地区漁業者の要望を受け、県栽培漁業センターでは平成9〜15年まで種苗生産を試みました。一般に卵で産まれる魚の場合は、親魚池で産まれた卵をネットで集め生産池に収容しますが、カサゴは卵で産まれないため、11〜3月の繁殖シーズンに仔魚(産まれてまもない魚)を産みそうなメスをカゴに入れ、水槽に吊るす方法で生産します。水槽内で産仔(さんし=仔魚を産むこと)させ、その後、親魚だけを取り出して仔魚を飼育する方法で生産します。一匹の親魚が1回の産仔で1〜5万尾を産むとされ、同じメスが1シーズン中に3〜4回産仔します。仔魚は親の体内である程度成長するため、産まれた直後から目が見え、餌も食べます。

しかし、仔魚が親の体内で大きくなるため、親の餌を工夫しなければ、よい仔魚を得るのは難しいようです。産仔した親や産仔回数によって、仔魚の大きさや体色が異なり、小さいものや白っぽいものはすぐに死んでしまいます。配合飼料だけで飼育した親から産まれた場合、仔魚はしばらくは元気でいるのですが、10日くらい経つと突然死んでしまいます。このことから、安定した仔魚を得るためには、親魚の栄養要求を解明し、適切な餌を与えることが必要です。一方、仔魚の餌を改善すれば、弱いものでも生残日数を延ばせるのではと考え、配合餌料を産まれてすぐから与えてみると、30日くらいまでは飼育が出来るようになりました。仔魚の餌の組成、量などにも検討の余地が残っているようです。親魚、仔魚の餌に関する技術開発を続け、安定した種苗生産につなげたいと思います。

(栽培漁業センター技師 今中 園実)

 

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