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オオエンコウガニ (平成15年12月2日 掲載)

幼生の完全飼育に成功

オオエンコウガニ

オオエンコウガニ

カニ缶詰のラベルにズワイガニの名前に並んで‘マルズワイガニ’と書かれたものを見かけた人も多いと思います。マルズワイガニと言うカニは正式には存在せず、オオエンコウガニ類を指す呼び名となっています。オオエンコウガニという名前を聞いたことがある人はほとんどいないと思いますが、深海性のおいしいカニです。

缶詰に使用されるオオエンコウガニ類は、アフリカオオエンコウガニや、アメリカオオエンコウガニ等で、アフリカやアメリカなどで漁獲対象とされており、日本企業も参加しているようです。実は、アフリカ、アメリカだけでなく日本にもオオエンコウガニが生息しています。甲羅の幅が20cmに達する大型種で、東京湾から南シナ海までがその分布域となっていますが、その生態についてはほとんど分かっていません。

各県の水産試験場の調査では、駿河湾では由比沖から焼津沖の水深550〜850mの海底から44尾、相模湾では熱海沖から河津沖の水深300〜750mから86尾、相模湾堆の水深495〜695mで37尾、宮崎県沿岸の水深400〜900mから908尾捕獲した事例があり、千葉県野島崎以北の太平洋岸や日本海側での捕獲の記録はありません。生息場所の水温は約5℃と冷蔵庫並みの冷たさです。静岡県でもカニ篭漁業で漁獲されますが、数が多くないため地元で消費されるようです。

コクのある甘みがあり、アブラガニと呼ぶ地域もあります。その味については漁師さんにも認められ、「幻」の称号を与えても良い一品ではないでしょうか。有望種であるこのカニの種苗生産の可能性を探るため、県栽培漁業センターでは幼生の飼育を試み、2002年4月に稚ガニまでの飼育に初めて成功しました。卵からふ化した幼生は、ゾエアと呼ばれる時期を4ステージ、メガロパ1ステージを経て稚ガニとなり、プランクトンの期間はおよそ3カ月であることが分かりました。稚ガニの大きさは甲羅の幅で約5mmでした。幼生の完全飼育に成功したことにより、本種の生態解明につながるとともに、将来の種苗生産や放流技術開発につながる芽がでてきました。今話題の深層水の利用も有効かもしれません。

(県栽培漁業センター 主任研究員 岡本 一利)

 

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