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ムツとクロムツ (平成15年4月8日 掲載)

外見は酷似、うろこに違い

藻場で群れる小ムツ

藻場で群れる小ムツ

ムツは伊豆諸島近海でキンメダイなどと同様に数百mの深さから釣りで漁獲されます。身は少し柔らかく、刺身や煮付けなどにしてとてもおいしい魚です。というと大きな魚を想像するかもしれません。事実、ムツは10kg以上にもなる大きな目と鋭い歯を持ったこわそうな魚なのです。ところがムツにはもう一つの顔があります。それは定置網に入ったり、岸壁で釣れたりする“小ムツ”と呼ばれる小さなムツのことです。小さなアジのことを伊豆半島ではジンダと呼んでいますが、それに対して下田ではこの小ムツのことをジロベーと呼んでいます。小ムツのから揚げは独特の食感があり、これもおいしいものです。このように大きさに応じておいしく食べられるムツは、重要な水産資源となっていることはいうまでもありません。

分類学上、ムツ属にはムツとクロムツの2種類がありますが、外見ではほとんど見分けがつきません。魚市場でいうムツ類にはムツとクロムツが混じっており、専門家でも見分けがつかないほどよく似ています。市場では脂がのったムツ類はすべて“クロムツ”、そうでないムツ類は“ギンムツ”とよばれており、“クロムツ”は比較的高値で取引されています。ムツとクロムツの違いは、側線の上に並ぶうろこの数くらいで、ムツでは58枚以下、クロムツでは60枚以上で、クロムツの方がうろこが小さいというのが特徴です。しかし、現実には58枚や59枚の魚はたびたび見られ、調査の時市場の暗い中で数えることの誤差も考えると、両者を判別するのはなかなか難しいといえます。漁師さんに聞くと「ムツとクロムツは漁場が違う。」、「釣れる時期が違う。」と言う答えが返ってきます。どうやら、両者は近い海域でも住み分けているようで、種の分化や生態的な面で興味が持たれます。一方、定置網で獲られる小ムツについては十分な研究が進んでいませんが、今のところ調べた魚はすべてムツの子供で、うろこの数は55枚前後でした。

残念ながらいまのところクロムツの子供には出合ったことがありません。成魚は混じって釣れることもあるのになぜ幼魚は混じらないのか、なぞは残されたままになっています。

(栽培漁業センター主任研究員 川嶋尚正)

 

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